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「もう借りたお金を返す資金が手元に全くない…仕方ない、この家を売ったお金で返済しよう。」
「でも、この家、住宅金融支援機構の担保権(抵当権)が付いてるよ…。こんな状態で家を売ることはできるのかな…。」

売却価格では抵当権をはずせない場合、これまで説明してきましたとおり、任意売却という方法を使うことで解決することになります。

金融機関が実施する任意売却は、住宅ローンの破綻による一般住宅の任意売却のほか、住宅金融支援機構の任意売却があります。
この2つの任意売却は、売買金額の程度や担保権者など利害関係人が同一であり、等しい手続的規律が求められます。

以下では、住宅金融支援機構が関わる任意売却の重要ポイントの解説をしていきます。

~目次~

住宅金融支援機構ってなんだ?

住宅金融支援機構とは、簡潔に言うと、

一般の金融機関による住宅の建設等に必要な資金の融通を支援することを主な目的のひとつに据える独立行政法人

と、いえます。

住宅金融支援機構は、旧住宅金融公庫から生まれ変わり、2007年4月1日から自律的な経営のもと、民間金融機関による長期固定金利型住宅ローンの供給を支援する業務を主な業務としています。

住宅金融支援機構が関わる任意売却の手続的な流れ

住宅金融支援機構が関わる任意売却の手続的な流れは、以下の通りです。

1.「任意売却」に関する申出書の提出

住宅金融支援機構が担保権を持つ不動産に関する任意売却を希望する者は、任意売却の手続に入る前に、住宅金融支援機構に対し、「任意売却に関する申出書」(6P)を提出する必要があります。

2.任意売却の対象となる物件の調査・価格査定

不動産仲介業者は、任意売却を望む不動産について、物件調査を実施したうえで、その結果を記載した数種類の書類(詳しくはコチラの2p~3p)を住宅金融支援機構に対し、提出する必要があります。
なお、不動産仲介業者は、原則として、住宅金融支援機構が担保権を持つ不動産に関する任意売却を希望する者を、自ら選定することになります。

3.売出価格の確認通知

住宅金融支援機構は、不動産仲介業者によって実施された物件調査の結果に基づき、仲介業者が算出した査定価格を承認できるか否か、任意売却を希望する者に対し、通知をします。

4.媒介契約の締結

住宅金融支援機構からの売出価格確認通知後、任意売却を希望する者と不動産仲介業者との間で、専任媒介契約または専属媒介契約を締結します。
そして、その契約書類などを、契約を締結した日から10日以内に住宅金融支援機構に対し、提出します。

5.販売活動を行う際の留意点の確認

不動産仲介業者は、任意売却を行う際、買受希望者が見つかりやすいように、いくつかの留意点(詳しくはコチラの3p~4p)を確認します。

6.「販売活動状況報告書」の提出

不動産仲介業者は、買受希望者が現れるまでの間は、月に一度、住宅金融支援機構に対し、「販売活動状況報告書」(詳しくはコチラの13p)を提出する必要があります。

7.利害関係人との調整

不動産仲介業者は販売活動と並行し、担保権等の抹消条件について、差押債権者や後順位抵当権者などの利害関係人に確認する必要があります。
なお、利害関係人の有無は、最新の登記事項証明書により確認しなければなりません。

8.購入希望の通知

購入希望者が現れた場合、不動産仲介業者は、住宅金融支援機構の売出価格の確認通知の有無に応じて、種々の書類(詳しくはコチラの4p)を、住宅金融支援機構に対し、送付する必要があります。
なお、その際、住宅金融支援機構の任意売却を希望する者に対する担保権消滅の可否についての通知まで、1週間程度の期間が設けられます。

9.売買契約の締結

住宅金融支援機構が担保権消滅を承認した後、不動産仲介業者は、任意売却を希望する者と買受希望者との間で、売買契約を締結します。
なお、売買契約の締結に関する住宅金融支援機構の承諾前に、売買契約を締結する場合には、特約で必ず、住宅金融支援機構の承諾を条件とする必要があります。

10.代金決済

不動産仲介業者は、担保権抹消関係書類作成の準備のため、遅くとも売買契約の代金決済日の2週間前までに、「代金決済予定日等の報告書」(20p)を住宅金融支援機構に対し、送付する必要があります。
また、代金決済日当日には、売主と買主は、売買契約書原本、重要事項説明書原本、身分証明書(運転免許証、健康保険証、パスポート等)を持参する必要があります。

住宅金融支援機構が関わる任意売却の特徴

住宅金融支援機構が関わる任意売却の特徴は、ある支出を費用として計上できるか否か、について一定の基準が存在することです。
以下、具体的に確認していきます。

1.不動産仲介手数料

不動産仲介手数料については、宅建業法の規定に基づいた、手数料(消費税を含む)全額が、費用として認められます。

2.抵当権抹消登記費用

抵当権抹消費用は、処分に必要な登記にかかる費用全額が、費用として認められます。

3.滞納管理費、修繕積立金

マンションの管理費等の滞納分は、請求があった場合、原則として滞納管理費・修繕積立金について、滞納額全額が、費用として認められます。ただし、過去5年分までの延納管理費・修繕積立金であり、延滞金は除かれます。

4.後順位抵当権者に関する担保解除料(ハンコ代)

住宅金融支援機構は、基本的に第1順位の担保権を持っています。
そして、住宅金融支援機構が任意売却をする場合、後順位担保権者への担保解除料(ハンコ代)の基準の目安は、上限30万円、かつ、後順位担保権者の各々の債権額の1割を超えない額となっています。

具体的には、以下の通りです。

第2順位 30万円または残元金の1割のいずれか低い額
第3順位 20万円または残元金の1割のいずれか低い額
第4順位以下 10万円または残元金の1割のいずれか低い額

5.差押債権者に関する差押解除応諾費用

租税公課、優先税全額は、費用として認められます。それ以外の差押登記がある場合は、30万円以下の額のみ、費用として認められています。
実際の運用では、10万円または、固定資産税・都市計画税の1年分のいずれかの低い額が、費用として認められているそうです。

6.その他

住宅金融支援機構に関する任意売却において、その他の費用考えられるものには、転居費用、測量費用、リフォーム・ハウスクリーニング費用、地代等の支払いが考えられます。

転居費用は、30万円以下の額が、費用として認められています。
測量費用については、どうしても必要な場合にのみ、境界確定に伴う全額が、費用として認められるケースがあります。
リフォーム・ハウスクリーニング費用は、任意売却の対象となる不動産の状況が、あまりにもひどい場合には、50万円以下の額が、費用として認められるケースがあります。