
「…このままじゃ住宅ローンが払えない、仕方ない、不動産売ってしまおう」
「…だけど、借りたお金以上で売れるのかな…?」
不動産売却の実現に向けて、私たちは何を確認しなければならないのでしょうか。
これまでも説明したとおり、不動産の売却価格が借入より安くなりそうなときは任意売却を検討することとなります
以下では、任意売却の重要なポイントに絞って、説明していきます。
任意売却ってそもそも何だ?というお方はコチラをご覧ください。
~目次~
ローンが残る不動産を処分できる者は誰か?

任意売却をするためには、ローンが残る不動産を処分できる権限が必要です。そこで誰がその不動産を処分できる権限を持っているか、が問題となります。
この点について、ローン延滞という事実が発生した段階では、まだ法的な申立ては行われていないため、ローンが残る不動産の所有者が、その不動産を処分できる権限を持っている、といえます。
また、破断手続の開始申立てがなされた時点では、まだ破産手続の開始決定が裁判所から出ていないので、ローンが残る不動産の所有者がその不動産を処分できる権限を持っている、といえます。
もっとも、破産手続開始の決定が裁判所から出されると、破産管財人が選任され、その時点で、選任された破産管財人弁護士がローンが残る不動産を処分する権限を持つこととなります。
その結果、ローンが残る不動産の所有者は、その不動産を処分する権限を失うことになります。
担保解除料の目安ってどのくらいになるの?

任意売却をする場合、その前提として、任意売却をする不動産に付着している担保権等の権利登記を抹消する必要があります。そのため、ローンの残る不動産に担保を有する者に対し、担保解除料を支払い、権利登記の抹消に協力してもらう必要があります。
担保解除料とは、
ローンの残る不動産を任意売却し手元に入る売却代金について配当を受けることのできない利害関係人に対し、支払う必要がある解除料
をいいます。
ここにいう配当を受けることのできない利害関係人の例として、後順位の担保権者があげられます。
ローンの残る不動産の任意売却を行う際、最も頭を悩まさせる問題が、この担保解除料の額の問題であるといわれています。
担保解除料の大まかな目安は、以下の通りです。
①一般金融機関 | 10万円~100万円 |
②信用保証協会 | 10万円~100万円 |
③政府系金融機関 | 10万円~100万円 |
④サービサー | 10万円~100万円 |
⑤貸金業者 | 10万円~100万円 |
⑥仮差押え | 10万円~30万円 |
⑦仮差押え | 0万円~30万円 |
なお、5000万円程度の売買価格の任意売却であれば50万円程度、1億円程度の任意売却であれば100万円程度が相場であるといわれています。
任意売却ってどんな費用がかかるの?

ローンの残る不動産の任意売却にかかる費用は、常に認められるものとケースバイケースで認められるものがあります。
その費用は、以下の通りです。
○常に認められる諸費用 | ○ケースバイケースで認められる諸費用 |
不動産仲介手数料 | 建物取壊費用 |
抹消費用・担保抹消にかかる司法書士手数料 | 引越費用 |
不動産鑑定費用 | 測量費用 |
保証金・敷金返戻 | 立退料 |
固定資産税精算金 | 契約書印紙代 |
マンション管理費滞納分 | |
マンション修繕積立金滞納分 |
建物取壊費用
建物が古い場合など、建物を取り壊して更地にした方が、高く売却できるケースがあります。
もっとも、その場合には、ローンの不動産の所有者には、その建物の取壊費用を負担する金銭的余裕がないので、その建物の取壊費用を任意売却による不動産の売却代金から差し引く必要があります。
引越費用
ローンが残る不動産を任意売却すると、新たな所有者である買受人が現れる結果、その不動産から退去しなければなりません。そのため、引越しを余儀なくされることとなります。実務においては、任意売却をスムーズに進めるため、ある程度の常識的な範囲内(大体、10万円~15万円程度)で、不動産の売却代金から引越費用を差引くことが認める場合が多いです。
測量費用
任意売却をする際、ローンが残る不動産の買受人が境界の明示を条件とする場合があります。その際、境界確定のため測量が必要な場合、その測量費用が売却代金から差引かれる場合あります。もっとも、買受人が、測量を希望する場合、その測量費用は買主負担が原則であるといえます。
しかし、円滑迅速な任意売却の実現のため必要であれば、ケースバイケースで対応することも求められます。
不動産仲介手数料
任意売却をする際、宅地建物取引業者を利用した場合、その業者に対し、報酬を支払う必要があります。宅地建物取引業者が受け取ることのできる報酬額は国土交通省の規定で定められています。以下が、一般的な計算式(400万円を超える取引)です。
約定報酬額=(成約本体価格×3%+6万円)×105%
もっとも、この算定式は、払わなければならない報酬の最高限度額を定めたものにすぎず、具体的な額は個別の交渉に委ねられています。
抹消費用・司法書士手数料
担保権を抹消させるための費用は、一般的に、ローンの残る不動産の所有者が負担すべきものです。具体的には、以下の費用です。
売渡証書作成費用、担保権などの抹消費用、住所変更・商号変更などの変更登記費用、相続登記費用、保証書作成費用など
不動産鑑定費用
任意売却の前提となるローンが残る不動産の価値評価が不透明な場合など、裁判所の許可が必要となる場合には、鑑定評価を取る必要がある場合があります。
その場合の鑑定費用は、金融機関との交渉により5万円~30万円程度が目安となります。
契約書印紙代
契約書に貼る印紙代は、通常、少額なので、金融機関の負担として認められる場合が多いです。
しかし、住宅金融支援機構が主導する任意売却では金融機関の負担にはできないことに注意が必要です。
ゴミなどの撤去費用
任意売却の際、ローンが残る不動産に粗大ゴミなどが散乱している場合があります。そのような場合、その不動産について買受人が現れていれば、その不動産の所有者は撤去費用を負担する必要はありません。
立退料
任意売却の際、ローンが残る不動産について賃借人、占有者がいる場合、立退料が発生するケースがあります。そのような場合、その不動産について、買受人が現れている場合には、その不動産の所有者が立退料を負担する必要はありません。
保証金・敷金返戻
任意売却の実務において、保証金・敷金は、買受人に引き継がれるというケースが圧倒的に多いです。この点は、判例でも認められています。
もっとも、買受人が保証金・敷金支払いの負担を引き継がなければならないとすると、誰も買受人になりたがりません。
そのため、実務においては、保証金・敷金相当額をローンが残る不動産の売却代金から差し引き、買受人に対し、その分を充当する場合が多いです。
固定資産税精算金
任意売却の際、ローンが残る不動産の所有者が滞納している固定資産税を、円滑迅速な任意売却の実現という観点から、その不動産の売却代金から支払う、という場合もあります。
マンション管理費・修繕積立費
マンションの管理費などは、任意売却の売買代金から差し引かれる場合が多い、と一般的にいわれています。
まとめ
さて、今回は、任意売却に向けた確認必須ポイントについて、概観しました。
次回は、破産管財人による任意売却の諸手続について、概観していきたいと思います。
それでは、読んでいただき、ありがとうございました!