ページを選択

「もう、お金を返す余裕なんて全くないよ…しょうがない、このマンションを任意売却しよう…。」
「でも、マンションを任意売却するとき、何を注意すればいいんだろう…。」

マンションは、不動産の一種であり、任意売却の対象となり得るものです。
しかし、マンションは任意売却において、区分所有権という特殊な権利の取引であり、他の不動産を対象とする任意売却には無い特徴をもちます。

そこで、マンションの任意売却において、気を付けるべきポイントはどこにあるでしょうか?
以下では、マンションという特殊な不動産の性質に照らして、説明をしていきます。

そもそも区分所有権ってなんだ?

マンションの売買は、区分所有権という特殊な権利の取引という性質をもちます。
そして、マンションのための法律である区分所有法において、区分所有建物とは、

①構造上、区分された数個の部分が存在すること
②独立して、住居、店舗、事務所または倉庫その他建物としての用途に供することができるもの

の、2つの要件を満たした建物をいいます。


このことから、区分所有権とは、

一個の建物の中が構造上、複数に区分され、その各々が独立して住居・店舗・事務所その他の用途として供することができる場合に、その区分を所有する権利

と、いえます。

マンションの任意売却で説明が必要な重要事項

マンションの任意売却をする際、通常の不動産とは異なる重要事項の説明部分があります。
その説明部分は、重要事項説明書という形で、追加で記載しなければなりません。

具体的には、8項目あります。

1.建物の敷地に関する権利の種類および内容

・敷地については、実測面積・登記簿面積・建築確認対象面積を説明します。
・権利の内容は、所有権・員釈健・地上権等などの詳細を説明します。
・権利の内容が賃借権・地上権の場合、その対象面積、存続期間、賃料、地代などを説明します。

2.規約共用部分(本来は専有部分であるが、規約により共用部分とされた部分のこと)の定め

・規約共用部分だけでなく、法定共用部分に関する部分に関する規約も説明します。

3.専有部分の用途その他利用制限に関する規約の定め

・専有部分の用途その他利用制限の具体例として、ペットの飼育禁止、ピアノの遠足禁止、事業用途転用禁止などがあげられます。

4.建物または敷地の専用使用権(1階部分の庭や駐車場など)の関する規約の定め

・区分所有者が専用で使用できる建物または敷地に関する部分について、説明します。

5.修繕積立金の内容およびすでに積み立てられた金額

・積立額は、直近のものを説明します。

6.通常の管理費の金額

・管理の滞納があるときは、その額を告げなければなりません。

7.管理費、修繕積立金の減額の規約

・特定の者に減額する旨の規約があるときは、その内容を説明します。

8.管理委託業者の氏名および住所

・法人の場合は、商号・名称。主たる事務所の所在地を説明します。

部屋の所有権と部屋を所有するための敷地利用権の分離処分の禁止

建物と土地は、別個の不動産なので、本来は別々に処分できます。
しかし、マンションを任意売却するときは、建物と土地を別々に、つまり、部屋の所有権と、部屋を所有するための敷地利用権は、原則として、別々に処分することができません。仮に、別々に処分できるとなると現場は大混乱です。

もっとも、上記原則例外として、気を付けなければならないポイント2つあります。

1つは、個々の規約に別段の定めがあるときは、例外を設けることが可能であることから、マンションの任意売却の際は、必ず規約の存在および内容を確認するべき、ということです。

もう1つは、昭和58年以前に建築されたマンションは、敷地利用権の概念がないため、権利関係が複雑となっている可能性があるため、注意して任意売却を実施すべき、ということです。

また、マンションの登記は、部屋の所有権と部屋を所有するための敷地利用権の分離処分の禁止が前提とされた表記の仕組みがとられています。

管理組合ってなんだ?

管理組合とは、

マンションの共用部分(廊下・階段・ベランダ・柱・外壁など、法律上当然に共用部分になる法定共用部分と集会室・管理任室など規約により共用部分とされた規約共用部分)を管理する組合であり、区分所有者全員の意思を反映するために、団体化されたもの

を、いいます。

マンションの購入者は、当然に管理組合の組合員となり、管理組合の規定に従うことになります。

しかし、全員が組合員として共同管理するといっても、それが難しい場合は少なくありません。
そのため、区分所有者は集会の決議で、管理者を選任することができます。

もっとも、実務では、管理組合が自分で共用部分の管理や使用に関する業務を行うことは難しいので、マンション管理会社に管理業務を委託することが通常です。

また、マンションを購入し、所有した者は、管理費修繕積立金利用料管理組合に対し、支払わなければなりません。管理費修繕積立金利用料の具体的な内容は、マンション標準管理規約に規定されています。

修繕積立金の重要性

マンションの任意売却の際、マンションの売却価格を決定するにあたり、すでに積み立てられている修繕積立金の額が重要となります。
修繕積立金の額が少ないマンションは、将来に予想される大規模な修繕の際、費用が足りず、追加で修繕金を支払わなければならなくなるケースがあります。また、建物の管理に支障をきたすおそれがあることから、買受希望者が現れにくく、売却価格が下がる恐れがあります。

また、修繕積立金の弁済がないまま区分所有権が任意売却された場合、管理組合は、その区分所有権を譲り受けたものに対して、その弁済を求めることが出来ます。

そして、一般的には、任意売却における処理の際、滞納している修繕積立金はマンションの売却代金から、精算されます。
そのため、任意売却の際、区分所有権の売主がちゃんと修繕積立金の弁済をしたか否か、を確認することは重要です。

任意売却におけるマンションの売却価格を決定づける重要な要素

任意売却におけるマンションの売却価格を決定づける重要な要素は、大きく3つに分けられます

①専有部分における、眺望景観と駐車場空き状況、駐車場の利用状況
②土地権利における所有権、地上権、賃借権の存否、内容
③駅からの距離、バルコニーの広さ、建物外壁仕上材、外装の状況、セキュリティ設備、管理の状況、管理人室・コミュニティ施設などの要素

上にあげた要素の中で特に、マンションの駐車場の利用状況は売却価格の決定において重要です。
なぜなら、マンションでは、居住者数に比べて、駐車場が圧倒的に不足しているケースが多く、以前のマンションの区分所有者が駐車場を利用していたからといって当然に任意売却によって区分所有権を譲受けた者が、駐車場を使用することが出来るわけではないからです。
そのため、駐車場の利用状況を調べることは、任意売却にとって重要である、といえます。

駐車場の利用状況については、マンションの規約によって調べることができます。

マンションの規約はどこで確かめるの?

マンションの規約は、原則として、保管者に対し閲覧を求めれば、閲覧することができます。
ここにいう保管者とは、管理組合に管理者がおかれている場合には管理者、管理者は置かれていない場合には、建物を使用している区分所有者またはその代理人で規約または集会の決議で定める者、をいいます。

もっとも、マンションの規約は、建物の見やすい場所、例えばマンション内の掲示板などに掲示されていることが多いため、それを確認することで足ります。

任意売却を仲介する宅建業者の権利、義務

宅建業者は、マンションの任意売却のため、マンション管理者などに情報の開示を求めることが出来ます。

その情報とは、

①管理費及び修繕積立金の滞納額
②マンション管理組合の修繕積立金積立総額
③マンションの修繕の実施状況

など、かなり詳しいことまで調査することができます。
この調査によって得られた情報を前提に、任意売却を実施していくことになります。

また、宅建業者は、マンションを分譲した1年以内に、マンションの管理者に対し、設計図書を交付しなければなりません。
設計図書とは、当該建物または附属施設の関するの設計に関する図書、をいいます。

設計図書の具体的内容は、以下の通りです。

  • 付近見取図
  • 配置図
  • 仕様書(仕上げ表を含む)
  • 各階平面図
  • 2面以上の立体図
  • 断面図または矩計図
  • 基礎伏図
  • 各階床伏図
  • 小屋伏図
  • 構造詳細図
  • 構造計算書

これらを調べることで、マンションの任意売却における重要な事項のほとんどを知ることができます。
そのため、設計図書の具体的内容もまた、任意売却の実施において重要な情報となります。

まとめ

さて、今回は、マンションの任意売却の重要ポイントについて、概観しました。

次回は、担保不動産収益執行制度の概要について、概観していきたいと思います。

それでは、読んでいただき、ありがとうございました!

その他の任意売却に関する情報はコチラ!