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「債務者が破産してしまった…。私たちは、何か担保を持っていたかな…。」
「はい、私たちは、債務者の持っている信託受益権について質権を設定しています。」
「でも、信託受益権から具体的にどうやって債権回収するんだろう…。」

信託受益権は不動産の流動化スキーム、つまり不動産の取引が容易になるよう工夫された手法、の一つです。
近年、この不動産の流動化スキームを主に利用する業態では、不動産それ自体に担保を設定するのではなく、不動産から生ずる信託受益権に質権を設定するという方法で、実質的にその不動産を担保に取る方法が広く行われています。

そこで、以下では担保権としての信託受益権に対する質権実行の一方法である任意売却がいかなる形で行われるのか、簡単に説明していきたいと思います。

~目次~

信託受益権ってなんだ?

信託受益権とは、

ある不動産の所有者が、その不動産をいったん信託銀行などの受託者に対し、信託をして、その信託した不動産から生まれる賃料などの経済的利益を受ける権利

をいいます。
ところで、一般の不動産の売買では、不動産の売主が買主に対し、その不動産の所有権を譲り渡すことになります。
しかし、信託受益権の売買は、その不動産から発生する経済的利益を受ける権利のみを、信託受益権の買主に対し、譲り渡すことになります。

そもそも信託契約とはなにか

信託契約とは、

信託の対象となる財産の所有者である委託者が所有する財産を受託者に移転し、一定の目的に従い、受託者に対し、本財産の管理や処分をさせる契約

をいいます。
簡潔に言うと、自己の財産をについて他人に管理・運用を委ねる契約といえます。

信託した財産の管理・運用の態様およびその目的は、信託の対象となる財産の所有者である委託者が、自由に決定することができます。

不動産信託契約における用語法は、以下の通りです。

委託者信託の対象となる不動産を所有し、
その財産を一定の目的に従い、受託者に譲渡す者
受託者委託者から不動産の譲渡・信託を受け、
信託の対象となる不動産をその信託の目的に従って、管理・運用・処分する者
受益者信託の対象となる不動産から生じた経済的利益を享受する者

信託受益権の売買の基本的なパターン

信託受益権の売買の基本的なパターンは、大きく2つ、考えられます。

1つは、信託受益権をそのまま売却する方法です。
そして、その売却後、信託受益権の買主は、信託銀行などの受託者との間で締結されている信託契約を解除するか否かを決定することとなります。
信託契約を解除すると、信託銀行などの受託者から、信託の対象となった不動産の返還を受けることとなり、解除後、信託受益権の買主は、実物不動産として保有します。

もう1つは、信託契約を解除して信託銀行などの受託者から不動産の返還を受けた後、その不動産を売却する方法です。
この売買の態様は信託契約を解除した後に、その解除により返還を受けた不動産の所有権を買主に譲り渡す形式をとっていることから、その性質は不動産の売買契約といえます。

信託受益権の任意売却における実行方法

金融機関は、実務上、信託受益権の売買契約にかかる購入代金への融資の担保として、信託受益権に質権を設定することが多い、といわれています。
このような場合において、信託受益権の売買契約における買主が破産等したとすると、その信託受益権に対し質権を設定していた金融機関は、質権の任意売却による実行方法として、信託受益権それ自体を売却して融資にかかる債権を回収するか、あるいは信託受益権によって得られる経済的利益で回収するか、のどちらかを選択することになります。


一般的には、早期に融資にかかる債権を回収することが可能である信託受益権それ自体の売却の方法が望ましい、といわれています。

まとめ

さて、今回は、信託受益権の任意売却における実行方法、概観しました。

それでは、読んでいただき、ありがとうございました!

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