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 40年ぶりに相続法が改正され、そのほとんどは2019年から施行されました。これまでの相続法はどのようなもので、それが一体どのように変わったのでしょうか?本特集では、「相続のことはよくわからない…」という方でも理解しやすいよう、要点をおさえていきます!第1回では、「配偶者所有権」と「配偶者短期居住権」についてご紹介します。


「配偶者所有権」「配偶者短期居住権」とは

 これらの権利は改正後に新しく認められたものですので、初めて耳にした方も少なくないと思います。まずは端的に説明しましょう。

配偶者所有権

この権利を取得することで、建物の所有権を相続しなかった場合でもその建物に生涯住み続けることが可能になる

配偶者短期居住権

この権利により、配偶者所有権が認められなかった場合でも、一定期間の間、建物に居住することができる

 うーん、なんとなくわかるようで、少しわかりにくい気もします。そこで、より理解をしていただくために、登場人物を設定してみましょう。

例で考えてみよう!

登場人物1人目:ご主人 =5000万円の価値がある建物の持ち主(名義人)、5000万円の現金も所持している

登場人物2人目:奥さん =配偶者(相続人)

登場人物3人目:娘さん =子(相続人)

この3人の関係性において、もしご主人がなくなった場合、家の所有権を得ることが可能であるのは奥さんか娘さんのいずれかになり、現金はそのもう一方が得ることになります。

注意すべき点

 ここで注意すべきは、奥さん(配偶者)がこの建物を相続した場合、この建物の価格は5000万円であるため、不動産の相続だけで法定相続分に達してしまうという点にあります。すなわち、家の所有権は得ることができても現金の相続はできないため、将来への不安が募ることになってしまいます。また、奥さん(配偶者)が現金を受け取った側においても、金銭的に余裕が得られても所有権は得られないため、娘さんの協力が得られない場合には、これまで当たり前に住んでいた家を失うことになってしまいます。この状況は改正前のものですが、いずれの場合においても不安が残る形になっていることがわかりますね。


「それじゃあ、配偶者の立場はどうなるの?」
「両者が家に住めて、現金も相続できる方法ってないの?」

 そう思われる方もいらっしゃるかもしれません。

結論としては、あります!!

 その答えこそが、冒頭で説明した「配偶者所有権」と「配偶者短期所有権」になります。前者の権利では、建物(自宅)を居住権と所有権に分割して相続することが可能となります。もし、娘さん(子)が所有権、奥さん(配偶者)が居住権を得たとしましょう。この場合、両者が家に住むことが可能です。奥さんは所有権こそ持たないものの、生涯にわたって家に住むことができるんですよ!この場合、不動産の相続は奥さんが2500万円、娘さんが2500万円分となりますので、現金も2人で2500万円ずつに分割して相続することが可能となります。これであれば安心ですね。また、本権利は「不動産に関する権利」として登記することもできますよ(遺産分割協議等で認められる必要があります)。

新たな疑問

 しかし、ここで次なる疑問が出てくるかと思います。

「配偶者居住権が認められなかった場合はどうなるの?」

 ご安心ください。もし「配偶者居住権」が認められなかった場合でも、「配偶者短期居住権」によって、一定期間はその家に住むことができます。この一定期間とは、相続が始まったタイミングから6ヶ月を経過する日、または遺産分割によってその建物の帰属先が決定した日のいずれか遅い方になります。

 例えば、ご主人が4月7日に亡くなり、6月10日に遺産分割が決定した場合、配偶者短期居住権の適用は、相続が始まったタイミングから6ヶ月経過した10月7日までとなります。

 もう1つのパターンも考えてみましょう。ご主人が4月7日に亡くなり、12月20日に遺産分割が決定した場合、相続が始まったタイミングから6ヶ月経過していますので、配偶者短期居住権の適用は12月20日までとなります。この権利によって、6ヶ月の間は奥さん(配偶者)の居住権が守られることになりますよ!!



相続法特集第1回、いかかでしたでしょうか?
次回は「特別寄与料」についてご紹介します。


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