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さて前回から、不動産売買の際に最初に授受するお金「手付金」についてお届けしています。
今回は、売買契約の解除手段のひとつである「手付解除」について解説してきます。
不動産売買において、手付解除を巡るトラブルは珍しいことではありません。売主として損をしないためにも、手付解除について詳しく知っておきましょう。

◆「手付解除」とは?
手付金のひとつである「解約手付」。解約手付で売買契約の解除権を行使することを「手付解除」と言います。
前回もご説明したように、買主が解除する場合は手付を放棄し(手付流し)、売主が解除する場合は受け取った
手付金の倍額を返却(手付倍返し)すれば、無条件で契約を解約することができます。
理由を明確にする必要がなく、相手の同意を得なくても、一方的に解約できるということです。
解約手付を設定しておけば、高額な資産取引において、「やっぱり契約をやめたい」と考えたとき、多大な不利
益を被るリスクを軽減できます。
◆「手付解除」はいつでもできるわけではない
手付解除は無条件で契約を解除できますが、解除できる期限は決められています。
民法では、手付解除期限を「当事者の一方が契約の履行に着手するまで」と定めています。つまり、売主が契約
解除できるのは、買主が契約の履行に着手するまで。買主が契約解除できるのは、売主が契約の履行に着手する
まで、ということです。
では、「契約の履行に着手」とはどのような状態を指すのでしょうか。
簡単に言うと、「売買を成立させるために必要な行為をしたとき」という意味です。ただし、該当する行為を民
法上で明示していないため、「履行に着手しているかどうか」で解約時にトラブルに発展してしまうことも多い
のです。
「履行に着手」と判断される例を示しておきましょう。
<売主>
・所有権移転の登記手続きをしたとき
・売却を前提とした分筆登記申請をしたとき
・抵当権を消滅させるために借入金の返済をしたとき
<買主>
・中間金や残代金の支払いをしたとき
・売買代金と引き換えで物件の引き渡し請求をしたとき
ただし、所有権移転の登記手続きや残代金の支払いは、物件の引き渡しと同じタイミングで行われることが多くなっています。引き渡しギリギリまで手付解除が可能では、最後まで不安定な状態で取引を進めることになります。
無用なトラブルを避けるために、手付解除期日を設けておくのが一般的です。売主・買主の合意のもとで具体的
な日付を決め、売買契約書にも明記されます。